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【 与信管理入門 第33回 「相殺による回収」 】 |
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相殺による回収は、もっとも確実かつ簡便的な回収手段である。
債権を有している取引先に対して、相対する債務を持っているときは、一方の意思表示によって相殺することができる。
例えば、自社が顧客A社に対して100万円の売掛金を持っているとしよう。100万円の債権は支払期日を過ぎても支払われてない。
一方、自社はA社に対して、100万円の買掛金も持っている。
このような状況で、自社は売掛金と買掛金を相殺することができる。つまり、買掛金100万円を支払わないことで、売掛金100万円を回収することになる。
こうした相殺の利点は、相手の同意を得る必要もなく、内容証明郵便で行うことができるということだ。
ただし、相殺適状といって、2つの債権は同じ種類の債権であること。
そして、弁済期が到来している必要がある。
自分が支払う買掛金は期限の利益を放棄することで問題はない。問題なのは、こちらの売掛金である。
さらに、相殺禁止などの特約が存在していないかを確認する必要もある。
また、相殺と債権譲渡が競合しても相殺が優先される。差し押さえと相殺でも、相殺が優先される、差し押さえ後でも相殺することができる。
仮に相手方が倒産しても、債権届出期間内であれば、相殺できる。破産の場合は、いつでも相殺できる。
商社など顧客と相対する取引を行う業種では、相殺による回収は常に意識しておくべき債権保全策である。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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