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与信管理入門 第23回 危険な兆候3〜過剰な投資 |
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企業は先行投資し続けなければ生き残れない。
しかし、市況の変化などにより、競合に先駆けた先行投資が裏目に出ることもある。
過剰な投資は企業の財政状態悪化の兆候である。
では、適切な投資とはどの程度なのだろうか?
色々な尺度があるが、営業活動によるキャッシュフローのプラス額の範囲内に、投資活動によるキャッシュフローのマイナス額が収まっているかどうかが一つのポイントである。
営業で稼いだキャッシュフローを新規投資に回していることになり、健全な投資サイクルといえる。フリーキャッシュフローがプラスの状態だ。
いわゆる、優良企業のキャッシュフロー計算書では、営業キャッシュフローの範囲内に、投資キャッシュフローのマイナスが収まっていることが多い。
一方、急成長しているベンチャー企業のキャッシュフロー計算書では、営業キャッシュフローを上回る新規投資をしていることが多く、フリーキャッシュフローはマイナスの状態になる。
こうした新規投資が、本業に関するものであればまだ良いが、新規事業や本業に直接関係ない投資だと問題である。
その典型例が、自社ビル建設である。
業種にもよるが自社ビル自体は、収益を生まない。それに、億単位の投資をすることがリスクになる。
もちろん、本社に勤務する社員のモティベーションは、立派な自社ビル建設により上がるはずだ。
しかし、それがどれほど企業の競争力に影響するかという疑問がある。
そもそも、影響力があるほど本社の人員が多いことも高コスト体質を示し危険である。
さらには、自社ビルを自己資金で建設していればまだ良いが、借入金を調達することが多い。負債を増加させ、後々も企業の財務を圧迫する要因にもなる。
取引先が自社ビルを建設したら、よほど儲かっているのだと楽観せずに、財務体質が悪化する可能性を検証すべきだ。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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