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与信管理入門 第22回 危険な兆候2〜異業種への参入 |
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本業が上手く行かなくなった経営者は、得てして異業種に参入しようとすることがある。
しかし、衰退業種など特殊な場合を除き、本業を立て直すのが近道であることが多い。
特に、中小企業の場合は人材が少ないために、新規事業は社長が直接、陣頭指揮を執ることになる。
社長の多くのエネルギーと時間が新規事業に割かれる。
その結果、異業種で成功すれば、その投資は報われるが、失敗すると本業にまで影響が出る。
社長が関わりを減らした本業は、今まで以上に低迷するはずだ。
新規事業に割いた時間を本業の立て直しに注いでいれば、違う結果になった可能性があるのにだ。
業績が低迷した経営者が手を出したくなる業種が二つあるといわれている。
飲食業と不動産仲介業である。
飲食業は日銭が入ってくるために、手形で取引している社長から見ると、オイシイ仕事に見える。
不動産仲介業は利幅が良い。仲介物件を成約して、両手といわれる売り主と買い主の両方から手数料をもらうと、成約価格の6%+12万円になる。
例えば、東京都内の中古マンションなど、立地にもよるが5千万ぐらいはする。その場合は、312万円になり、そのほとんどが粗利になる。
フィービジネスのため、原価はかからず、人件費や広告宣伝費などの経費だけなので、利益率が高い。
ところが、飲食業は万年不況業種と言われるほど、競争が厳しい。
また、消費者の嗜好もころころ変わる。その割には、店舗の内装など設備投資もかさむ。
異業種から参入して簡単に成功できるビジネスではない。
不動産業に至っては、今の時期は不況業種でもある上に、業界内の社数も多く競争も厳しい。
街の鄙びた不動産屋が暇そうに新聞を読んでいても、経営が成り立っているのは、古くからの大家を抱えているからなのだ。
新規で参入して、すぐに大家を獲得できるものではないし、入居者や買い手を探すには相当の広告宣伝と営業力が必要になる。
素人が参入して成功できるビジネスではない。
つまり、隣の芝生は青く見えるだけで、実は、自社の業界と多かれ少なかれ似たような問題や成長阻害要因を抱えているのだ。
しかし、今まで曲がりなりにも本業でやってきたわけであり、少なからずノウハウや人脈、顧客を持っている。
その中で、地道な経営努力や製品・サービスの改善、営業活動の強化を行うことが、実は、経営再建への一番の近道なのである。
冷静に考えれば、理解できることが、業績を低迷させた経営者には分からない。少なくとも、その時点で
は周りが見えていない。
異業種に参入したばかりに、本業までも更に混迷を深め、破たんへの道をまっしぐらという経営者が少なくない。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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