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与信管理入門 第20回 与信限度額について |
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顧客や融資先などに対する売り掛けや融資の上限額を与信限度額という。1回の取引の限度額ではなく、与信残高の上限になる。
よく混同されているが、与信限度額には2種類ある。一つは、営業上必要な限度額と、もう一つは理論上適切な限度額である。
一般的に、与信限度額の設定といえば、後者を指す。与信限度額の代表的な算出方法には次のようなものがある。
(1)粗利益累計額法
(2)法的信用限度法
(3)担保資産6掛け法
(4)業種比較法(準用法)
(5)標準評点比較法
(6)売掛能力一割法
(7)自己資本基準法
(8)仕入債務基準法
(9)簡便法
(10)総合評価法
このように、与信限度額の算出方法は何通りもあるが、自社にあった設定方法を見つけ出すことが大切だ。
そのためには、これはと思った算出方法を使って、100社程度の顧客の限度額を算出する。そして、現行の取引額と比較してみて大幅な乖離がないかを見る。
理論的に算出した限度額の範囲内に、現行の取引額が収まっていることはまれで、オーバーしている取引先が出てくる。
その比率が多いほど、与信限度額としては不適切だということになる。反対に、比率が少ないほど、自社にあった与信限度額であるといえる。
こう書くと、与信限度額設定とは、現行の取引を追認するためにあるのかと疑問をいだく方もあるだろう。必ずしもそうではない。
ただ、既存の顧客に対して、現行の取引額を下回る与信限度額を設定してしまうと、与信限度額を上回る部分は、取引ができないことになる。
実務的には、これが大変な作業になる。
こうした顧客が数社であれば、与信限度額による与信管理のために当然だといえるが、これが数十社に上れば、現実的ではなくなってくる。
初めて、自社に与信限度額を導入する場合は、こうした検証作業が欠かせない。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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