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与信管理入門 第10回 定性分析 |
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定性分析では、よく「ヒト・モノ・カネ」に着目しろと言う。私はこれをもう少し細かく分けて、次の5つの観点から分析している。
1.経営者
2.企業
3.事業(製品とサービス)
4.資金繰り
5.組織
1.経営者
経営者が初めに来ているのは、重要だからである。
中小企業では、企業の成功の半分以上は経営者の能力にかかっていると言われる。比率は別としても、これは、大企業でも言えるはずだ。
その証拠に、投資ファンドなどが経営危機にある会社を再生させる場合に、経営者を交代させる。
経営者は続投で、従業員を入れ替えるという話は聞いたことがない。
組織はトップを変えれば、自ずと変わってゆくからだ。そこで、経営者の能力を様々な角度から分析していく。
2.企業
これは企業の属性データである。業種、業歴、従業員数、市場、資本金などを分析する。
倒産との関係もある程度明らかにされており、定性情報の中でも、もっとも定量化しやすいデータである。
3.事業(製品とサービス)
ここでは、企業の生命線であるところの事業そのものを分析する。利益を生み出す源である製品やサービスがどれだけ競争力があるかをみる。
さらには、競争力の基盤となる研究開発、技術などにどれだけ投資しているかもみる。
4.資金繰り
資金繰りは決算書で見るのではないかと思う人もいるだろう。
しかし、決算書から資金繰りを垣間見ることはできても、資金繰り表がなければ、詳しいとこ
ろは分からない。
だから、定性情報で資金繰りが分かる情報があれば、そうした面からも分析を行うのだ。特に、手形に関する情報などは如実に資金繰りについて教えてくれる。
5.組織
業績の善し悪しは必ず、社員の士気に影響する。
業績が良ければ社員の士気が必ず上がるとは限らないが、悪ければ士気は必ず低くなる。
そして、社員の士気の低さは、オフィスのあちこちに反映されることになる。
事務所や倉庫が整理整頓されていない会社は業績が悪いというが、本当にそうである。それは、社員の士気の低さも表すと共に、指揮系統の乱れも表している。
あるいは、取引先を接待したときに酔った担当者が、ポロッと漏らす一言も貴重な情報である。
定性情報のチェックポイントは無数にある。
その中でも、自社の業界や特徴にあった定性情報を見つけるには、営業部門などでブレストを行うとよい。
そうした中で、自社に合致した定性情報が見えてくるはずだ。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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