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与信管理入門 第9回 「取引先の分析」 |
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取引先の分析には、定量分析と定性分析がある。定量分析は財務分析、定性分析は非財務分析とも呼ばれる。
通信簿に例えるとわかりやすいが、国語4、数学3という科目評価が定量分析、先生の所見が定性分析になる。
つまり、決算書を分析するのが定量分析であり、それ以外の分析は定性分析になる。
定量と定性の両方から分析して、企業を評価することを総合評価法という。
取引先を分析するときには、定量だけでなく定性もしっかり情報を収集して、分析することが重要である。
なぜ、決算書だけの分析では不十分なのか?それには3つの理由がある。
(1)未上場企業の決算書は入手できない
(2)未上場企業の決算書は古いことが多い
(3)未上場企業の決算書の正確性に疑問がある
金融機関など一部の業種を除き、取引先の決算書が入手できることの方が稀である。上場企業であれば、もちろん、決算書は公開されているから入手は簡単である。
しかし、未上場企業の決算書は公告義務があるにもかかわらず、実際はほとんど公告されていない。
仮に入手できたとしても、特に中小企業の決算は一年に一度である。四半期決算が義務づけられている上場企業とは違う。
したがって、決算と入手時期によっては、1年前以上の企業の財政状態を反映していることになる。
さらに、せっかく入手できた決算書も真偽のほどは分からない。上場企業でさえも、破たん時には粉飾決算が明るみに出ることもある。
ましてや、監査法人の監査も義務づけられていない中小企業の場合は、正確性に問題があると言われる。
こうした問題を解決するには、定性情報の収集が欠かせない。
定性情報は何かしら入手できる。また、定性情報は現在のものであるから、今、会社で何が起こっているかが分かる。
さらに、定性情報は粉飾しにくい。例えば、業績の悪い会社では社員の士気が低く、社内の雰囲気も暗いいことが多い。
そうした会社の社長が、「重要な取引先が来るから、今日だけは士気を上げて明るく振る舞ってくれ」と社員にお願いしても、士気や雰囲気は簡単に繕えるものではない。
それに対して、粉飾決算は少し数字に明るい社長であれば、自分一人でPCがあればできてしまう。
だから、粉飾決算を見抜くには、定量情報と定性情報の矛盾を見つけることが大切だといわれる。
いずれにせよ、定量情報だけで取引先の信用度を判断するのは片手落ちであり、危険な意志決定に結びつきやすい。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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