過去2回にわたり、輸出入禁止や規制品目について解説したところ、タイミングよく、クレハ子会社の書類送検にニュースが入ってきた。
同社の2011年12月7日付プレスリリースによると、「当社子会社の株式会社クレファインが製造・販売する特殊炭素材料を混ぜたプラスチック成型品(商品名「クレファイン」)の輸出業務に関し、2009年に不正な手続きがあったとして、警視庁が外為法違反の容疑で東京地方検察庁に書類送検をしました。」となっている。
日経産業の記事によれば、耐熱性の高い高機能樹脂に炭素繊維を混ぜた板を台湾などに無許可で輸出。書類送検されたのは、同社の元管理部長。
輸出価格が一定額以下なら国の輸出許可が不要となる「少額特例」の対象と偽っていた。
警視庁公安部は、輸出した製品が中国企業に買い取られて、軍事転用された可能性があるとしているが、同社は、日系、米国系資本企業に納入されたと認識していた。
先端技術を有する日本企業は、外国企業から狙われる可能性が高く、近年、こうした事件は増加傾向にある。また、サプライチェーンがグローバル化したこともこうした状況に拍車をかけている。
経済産業省の分析では、違反事件で最も大きな原因を占めているのが、「該非判定」を実施しないこと。2007〜2010年では、これが53.5%と過半数を占めている。
次いで、「該非判定における法令・通達解釈の誤り」が15.5%となっており、いわゆる思いこみから生じた違反が7割以上。
経産省によれば、下記のような思いこみが散見される。
(1)通関業者が対応してくれる
(2)工作機械が非該当なら、搭載したプログラムも非該当
(3)汎用性のある機械なら問題ない
(4)旧製品が非該当だったので、新製品も非該当
(5)自社の関連会社向けは輸出許可が不要
(6)米英独などホワイト国向けならば輸出許可が不要
(7)民生用途なので輸出許可が不要
輸出貿易管理令が定める輸出規制品目は、実に330品にもわたり、完成品の中に、対象品目が含まれていることを知らずに輸出してしまうケースもある。
経済産業省のホームページには、貨物・技術のマトリックス表が掲載されている。
http://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html
製品や技術の引き合いがあったら、まずは「該非判定」を行うべきである。直接、話を聞きたい場合には、経産省が主催する「安全保障貿易管理説明会」などに出向くのもよいだろう。
意図的な外為法違反は論外としても、思いこみで外為法違反に該当して、社会的な信用を失墜する事態だけは避けたい。
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