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与信管理入門 第7回 「不動産登記簿のポイント2」 |
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権利部の甲区の次に確認するのが、乙区である。
乙区には所有権以外の権利、主に「抵当権」が設定されている。
「抵当権」には、「抵当権」と「根抵当権」がある。
「抵当権」が、特定の取引を担保するのに対して、「根抵当権」は、反復継続する取引を担保する。
一般的に、金融機関が企業に融資をする際に取得するのは、「根抵当権」である。
「極度額」という限度額を設定して、その範囲の取引であれば担保されることになる。
金融機関が普通の「抵当権」を融資先に設定すると、融資額が完済されると、「抵当権」は抹消する必要がある。
しかし、借り換えなどとして、同額をまた融資することも多い。すると、また新たに「抵当権」を設定する必要がある。
そのたびに、登録免許税もかかるし、登記に必要な印鑑証明書などの書類もそろえなければならず、費用と手間がかさむ。
しかし、「根抵当権」であれば、極度額さえ決めておけば、いちいち融資の実行や完済の度に、登記や抹消を繰り返す必要がない。
金融機関などに限らず、大手商社やメーカーなども、継続取引が見込まれる代理店や取引先に「根抵当権」を設定することも珍しくない。
「抵当権」や「根抵当権」が設定されていれば、抵当権者が誰かを確認する。
銀行や信用金庫などであれば問題ないが、ノンバンクや商工ローン、高利貸しや個人であれば注意を要する。
その取引先や代表者個人の信用状態が低下している可能性がある。
通常、銀行や信用金庫などが、ノンバンクなどよりも借り入れの利息は低い。従って、企業はまず銀行や信用金庫などから融資を受けようとする。
それでも駄目な場合に、利息の高いノンバンクなどを利用することになる。ノンバンクも融資してくれなければ、高利貸しや街金融などに手を出すことになる。
また、「根抵当権」の場合は、共同担保がないか確認することも大切である。
共同担保の有無は、「共同担保目録」を取得することで分かる。不動産登記簿を取得するときは、一緒に「共同担保目録」を取得する。
「共同担保目録」とは、当該物件と共同で担保に入っている物件のリストである。
これを確認することで、こちらが認識していない取引先の所有不動産が明らかになることがある。
中小企業は決算書などの情報が入手できないと嘆く与信担当者が多い。
しかし、中小企業の場合、会社の財務状態と経営者の家計はリンクしている。業績が良ければ、家計も潤う。業績が悪ければ、家計は火の車だ。
会社で融資が受けられなければ、個人の信用でお金を借りることになる。
したがって、必ず、個人資産にその兆候が現れる。それを早期に発見することが大切だ。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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