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与信管理入門 第6回 「不動産登記簿のポイント」 |
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前回は定性情報の代表格として、商業登記簿について解説した。商業登記簿と同じぐらい重要性があるのが不動産登記簿である。
まず、不動産登記簿は土地と建物に分かれている。そして、土地については、いわゆる住所ではなく、「地番」によって識別されている。
住所と地番の関係は、常に1対1ではなく、一つの住所が複数の地番から成っていることも多い。
一つの地番を1筆と呼ぶが、数筆から成る土地の場合、その数筆の登記簿を全て取得しないと、正確な権利関係は把握できない。
その場合は、千円×筆数の印紙代がかかる。
もちろん、インターネット上の「登記情報提供サービス」で取得すると半額以下の費用で情報が入手できる。
ただし、「地番」は住所からは類推できないし、インターネットで検索もできない。従って、まずは不動産登記簿を取得するには、この「地番」を知る必要がある。
「地番」を知るには、取引先に権利証や謄本を見せてもらうか、法務局に備え付けのブルーマップと呼ばれる地図で確認することになる。
ブルーマップとは、住宅地図に地番が重ね合わされた特殊な地図で、これを使って地番を特定する。
最近では、電話で「地番照会」をしてくれる法務局も増えてきた。
また、不動産登記簿には「現在事項証明書」と「全部事項証明書」があるので、履歴の分かる「全部事項証明書」を取得する。
不動産登記簿は大きく、「表題部」と「権利部」に分かれる。そして「権利部」は、「甲区」、「乙区」で構成されている。
表題部は不動産に関する表示で、不動産の概況がわかる。与信管理で大切なのは「権利部」である。
「甲区」には、所有権に関する事項が記載されている。ここでは、登記上の所有者が誰であるかを確認することが大切である。
取引先の自社ビルだと聞いていても、取引先の代表者が個人で所有していたり、関連会社の不動産管理会社の名義になっていたりすることは良くある。
全く第三者の名義になっていたら、取引先との関係を調べる必要がある。
また、「甲区」に所有権以外の権利、「差押え」、「仮差し押え」、「仮処分」、「競売申立」などの登記がされていたら要注意である。
特殊な事情を除き、その取引先の財政状態は大変な状態にあると推察できる。
債務などの肩代わりに、金融業者などに不動産を差押えられたり、競売に掛けられたりしている可能性がある。
こうした取引先との新規取引は、通常避ける。また、既存取引先であれば、債権保全や撤退を検討することになる。
ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野和彦
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